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Statement

私は子どもの頃から集団に漂う無言の制約としての「空気」に漠然とした違和感を抱いていました。

社会人になっても日本文化特有のこの「空気」には折り合えず、徐々に個人で完結できる仕事に移行していきましたが、他者と関係を持つ以上、この「空気」はどこにでも発生し、行き場のない生き辛さは消えることはありませんでした。

その後、たまたまお茶の世界に触れる機会があり、それは私にとって転機となりました。それまでは茶道は決まり事に満ちて窮屈でしかないものと思っていましたが、読み解いていくほどにそこには閉塞感のない新鮮な感動があり、内心の美を求める制約は私の心に安寧とインスピレーションを与えてくれました。そして利休七則の「花は野にあるように」を思い起させる茶室の投げ入れの花に私は特に引き付けられました。

現在の私の作品は、和紙で花を造形し、パネルに接着し彩色しています。平面上に立体の造形を組み合わせることで、作品の実在と他者との「今」を共有する一期一会を作り出すのです。私は日本文化におけるこのコンテキストを押し広げながら、「花は野にあるように」本質は何かを追求し、あるがままの豊かさとは何か、作品という制限のある空間で自由に創造していきたいと思っています。

現代は情報に溢れ、人々は簡単にモブになり、同調圧力や集合意識の空気の中でいつの間にか社会の背景と化してしまいます。私がアートで目指すものは、作品を通して個々が心を解放し、尊厳を見つめること。そしてこれは社会の「空気」に対してのレジスタンスでもあり、私からの問いかけでもあります。

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